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1.はじめに

02. 白人社会と黒人の努力

2007年05月13日 土蜘蛛 |

 これらの文化産業はその誕生より永い間権力者である白人によって握られていた。そのため世界の若者も長い間アメリカ文化の影響を受けるとは、白人のスタイルの真似をすることであった。そう、ほんの十数年前まではである。長い間黒人にはそう言った産業への道は、むしろ他の人種、民族よりも閉ざされていた。黒人は他の民族と違いこの地に自分の意志で渡ってきた「移民」ではなく、「奴隷」として無理矢理連れてこられたという最初のきっかけがあり、400年以上続いた「人種差別」があったからだ。そう、黒人はアメリカにいるから成功したというよりも、アメリカにいながらほんの最近までは成功への道は一切閉ざされていたし、むしろそもそもなぜアメリカ大陸にアフリカ人である黒人がいるのか?そこがまず問題なのである(本来はそれどころかインディアン(ネイティブ)以外の人種がアメリカ大陸にいて、そこで権力を握っていること自体が不自然であるのだが。それは南アフリカ、オーストラリアにも言えることであり、中国やロシアなど未だに植民地を持つ国も言えることだが、それは歴史の大きな流れとそのなごりである。イスラエルのユダヤ人も北海道の日本人も北方領土のロシア人も今更生まれ育ったその土地を捨てることはできないのだ)。

 それが10数年前にその道は開かれ、ものすごいスピードで黒人音楽は世界の流通、出版、放送の情報網に広がり、若者文化として受け入れられた。なぜ道が開かれたか?さすが「自由」の国である。理由は単純で「儲かる」とわかったからだ。なぜわかったか?「魅力」があるからだ。なぜあるか?それは黒人に音楽的才能があるからだ(踊り、演技、運動神経もしかり)。実は白人は昔から黒人の音楽的才能を知っていて、パクり続けてきた。今まで黒人が音楽のある新しいスタイルを発明すると、必ずそれは当事者でなく、パクった白人によって世に広められた。今日ついに価値感の革命が起こり当事者である黒人が主張し、世界を包む時代が来たのだ。

 この論文では、黒人がどのような音楽(および文化)をアフリカという環境で産み出し、それがアメリカ大陸に渡ることで、何を受け継ぎ、何を失い、何と出会い(白人文化)、どう変化し、黒人音楽家達がそれをどう受け継ぎ、変え、発展させながら、現在の開かれた道を確立するためにどう闘ってきたかを見ていく。

 繰り返すが、黒人音楽が世界に広がったのは、道が開かれたからであり、道が開かれたのは、先人の黒人音楽家の努力による地位向上と、黒人音楽家やそのもっと前からの受け継がれ、発展してきた「黒人音楽」が、儲かるだけの魅力があったからである。道は開けていても、黒人自身の生活は今も昔と同じ、貧困と劣悪な環境を生きている。成功を掴むのと、それ以外の多くの黒人との差はあまりにも大きい。だから黒人は成功を掴むために強烈なハングリー精神を持っている(世界の若者は黒人はカッコイイとしか思っていない)。

 アメリカ文化の影響を受け、自国のアイデンティティを失っているのは戦後の世界の国が多かれ少なかれ持っている問題で、日本はもちろんそうだし、ヨーロッパですらそうだ。だが、アメリカの中にありながら、しかも一度はその文化の全てを捨てるよう強要された黒人が、どのようにひどい状況でも数百年に渡ってその文化のアイデンティティを保ち続けたことは驚きに値するし、その姿勢は見習うべき点が多いのではないか?

 ではこれからその黒人の文化の保持と発展のための「苦難」の歴史を「音楽」の視点から見ていくことにしよう。


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01. アメリカの文化産業と黒人

2007年05月06日 土蜘蛛 |

 黒人音楽(ブラックミュージック)ときくとどの様なものが思い浮かぶだろうか。ラップと呼ばれる身振り手振りのついたメロディーのない音楽。マライヤ・キャリーやマイケル・ジャクソンなどのR&B(歌もの)。あるいは古いジャズやブルースを思い浮かべる人もいるかもしれない。キーワードはアメリカの黒人による音楽と言えるだろう。

 現在の音楽産業、映画産業、スポーツ産業などはだいたいアメリカが中心である。音楽・映画・スポーツその他、文学、芸術などは世界を見渡せば、形は違えど、どこの国にだって存在するが、それを「巨大産業化」したのはアメリカが最初であり、現在でもその業界をリードし続けているからである。

 この論文のテーマである「黒人音楽」とは、つまり黒人によって作られる(行なわれる)音楽のことである。それは長い間黒人のためにあり黒人にしか聴かれていなかったが、現在世界に広まり、世界を包み込もうとさえしせている大きな影響力がある。その魅力と原因をはっきりさせるのがこの論文の目的である。黒人は現在、音楽だけでなく映画、文学、スポーツにも深く進出しており、その道は大きく開かれている。それによって世界の若者が黒人の影響を受け、そのファッション、スタイル、化粧までも真似している。突然変異現象にみえるこの成功には実は長い歴史とわけがある。

 その原因は単に黒人が「産業システム化された文化」の中心地であるアメリカにいるため、だけではない。なぜなら、アメリカには黒人以外にもほとんど全世界の全民族、全人種が存在しているので、全ての人種が音楽産業、映画産業、スポーツ産業などに進出することが可能だからだ。


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